勿忘荘(わすれなそう)

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埼玉の数学について(2021年入試)

 埼玉県の2021年入試における数学について、個人的な見解をまとめています。今回は学校選択問題(難しいほう)についてです。

 「埼玉の数学は難しい」と言われていましたが、それはこちらの学校選択問題に言えることになりました。学力検査問題と同じ問題もいくつかありますが、難易度の差は歴然となっています。

 

 ・出題内容と配点、難易度 ☆印は学力検査問題と同じものを表す

大問1(独立小問集合)

(1)式の計算(中2) A(4点)

(2)式の値(中3) B(4点)

(3)2次方程式の計算(中3) B(4点)

(4)2乗に比例する関数(中3) A(4点) ☆

(5)有効数字(中1) B(4点) ☆

(6)資料の整理(中1) A(4点) ☆

(7)立方体の展開図(中1) A(4点)

(8)連立方程式の文章題(中2) A(5点)

(9)確率(中2) A(5点)

(10)平面図形(中1) B(6点) ※部分点あり

 

大問2(独立小問)

(1)作図(中1) A(5点)

(2)座標幾何(中3) A(6点)

 

大問3(文章題)

(1)説明(中2) B(6点) ※部分点あり、★

(2)整数問題(中3) B(6点) ※部分点がある可能性あり

 

大問4(平面幾何)

(1)長さを求める(中3) B(5点) ☆

(2)相似の証明(中3) D(6点) ※部分点あり

(3)線分比と面積比(中3) C(5点) ☆ 

 

大問5(関数と図形)

(1)2乗に比例する関数の利用(中3) A(5点)

(2)動点と面積比(中2) C(6点)

(3)動点と面積(中3) C(6点)

 

 

  ・学年ごとの配点と、難易度ごとの配点

中1…5問=23点  中2…5問=26点  中3…10問=51点

難しくしようと思うとどうしても中3内容に偏る。学力検査問題と逆の傾向なので、どちらを受験するのかによって対策の仕方がかなり変わってくることは間違いない。

 志望校をいくつかの学校で迷っていて、学力検査問題と学校選択問題のどちらも受験する可能性があるのなら、ここの判断はなるべく早めにしたほうがいい。

 学校選択問題を受験する予定から学力検査問題のほうに変更する場合は、圧倒的に取り組みやすくなるが、それまでにしていた(するべき)勉強はあまり役に立たないことになるし、他教科の勉強にも影響を与えかねないので、ここの選択はそれなりの覚悟を持って決めるべきだろう。

 

 

A(必ず正解したい問題)…9問=42点

B(できれば正解したい問題)…7問=35点 ☆ここでミスしないようにしたい

C(少し難しい問題)…3問=17点 ★ここが合否を分ける問題

D(捨ててもいい問題)…1問=6点 ※部分点狙い

→例年はAがもっと少なくB、Cが多い印象だが、今回はミスしなさそうな問題が多かったように思うので、数学が苦手でも極端に低い点数は取らないのではないかと思われる。

 

 

  ・所見

 学校選択問題は範囲が縮小されたことにより易しくなったように感じる。

 大問1の問題数が増えたが、模範解答通りでなくても力づくで解ける問題もいくつか見られたため、例年よりも点数が取りやすくなったと思われる。

 記号選択問題が1問、説明や証明を含む記述問題が4問と、回答形式もほぼ例年通り。

 

 大問1の(5)の有効数字は、本来ならば難易度Aとしたいところだが、埼玉県では初めての出題であり、対策をしていないとすっかり忘れている可能性もあるため、難易度Bとした。

 出題範囲の縮小が大きく影響したか、大問1で方程式の文章題が出題されたり、平面幾何で学力検査問題と同じ題材が扱われたり、立体の問題が難しくできなかったりと、例年にない傾向が見られた。

 動点の問題は何年かに一度出題されるので珍しいことはないが、ここ最近出ていなかったので、対策が不十分だった受験生もいるかもしれない。

 問題量と難易度に対して50分という試験時間は少し厳しいが、例年よりも時間は確保できるように思える。ただ、大問3以降はどの問題に時間をかけて、どの問題を飛ばすかの判断をすることや、大問1で下手に時間をかけすぎないようにすることは必要だったと思われる。

 

  ・次年度に向けて

 どんな受験においても、難しい問題が中心で構成される入試問題に挑むにあたって大切なことは、時間配分と問題の取捨選択を上手にすることだろう。

 前から順に解く必要もないし、どこで点数を取ろうが合否は合計点で決まるので、たとえ空欄ばかりでも埋めたところがすべてあっていればまったく問題はないと言える。

 そして、自分の受験校に合格するために、どれくらいの得点が必要なのかも事前に把握しておくべきだろう。正確な予測はできないにしても、五教科のバランスを鑑みて、時間内に自分が取るべき問題をきっちり見極めて作戦を立ててもらいたい。

 

 学習塾で指導をしていても、どうしても生徒は難しい問題の攻略に目がいきがちだが、手を広げ過ぎるのは考え物である。

 各都道府県によって五教科の難易度バランスは大きく異なってくるだろうが、少なくとも埼玉県の学校選択問題を採用する学校を受ける場合、数学は60点前後を守り切ればどんな学校でも勝算はある。

 埼玉は理科社会で限りなく高得点を狙う必要があり、国語と英語も易しくはないので、少なくとも数学ばかり勉強するわけにはいかない。

 まして、勉強時間に対して点数の上昇が期待しやすいのは理科社会と英語のはずなので、このあたりも頭に入れて次の受験生には学習計画を立ててもらいたい。