(高校生向け)受験校の決め方・その3
(つづき)
前回は受験校のレベルや試験科目に注目しておおまかなラインナップの決め方について話しました。
今回は具体的なサンプルをもとにみていきます。
例が首都圏になっているので、首都圏の受験を考えていない場合は、自分の受験区域におきかえて考えてもらえればと思います(レベル・学部が似た大学名で置き換えてくれればそれで問題ありません)。
(ポイント3)サンプルで考える受験パターン
ここではいくつかの受験パターンの例を挙げていきます。
どれがよくてどれが悪いかなどは一概には言えませんので、これらのサンプルを見比べて、自分に合うものを参考にしてください。
なお、偏差値はあくまでも例として扱っているだけなので、正確ではありませんし、学校の雰囲気や受験日程などはすべて無視していますので、実際にこの通りの受験ができるとは限りません。
◎サンプル1(私大法学部狙い)
大学名 学部 偏差値
第1志望:慶應大学 法律 70
第2志望:中央大学 法律 65
第3志望:明治大学 法律 62.5
第4志望:立教大学 法律 62.5
第5志望:青山学院大学 法律 62.5
第6志望:法政大学 法律 62.5
第7志望:学習院大学 法律 62.5
第8志望:駒澤大学 法律 57.5
→とてもよく見るラインナップです。いわゆる「GMARCH」狙いですが、これはあまりいい例とは言えません。
受験生の気持ちとしてはGMARCHのどこか一つでも受かればいい、駒澤は滑り止めといったところでしょうか。ただ、このラインナップだと全敗する危険性が十分にあります。
志望校調査でこのように書かれた場合、次のようなアドバイスがしたいです。
☆GMARCHは2つか3つに絞る
→このレベルはなんとなく受けて合格するレベルではありませんので、6校すべて過去問できちんと対策する必要があり、これは相当な負担になります。
よって、GMARCHの受験校を減らし、1つの大学を複数回受験するような作戦を勧めたいです。
☆滑り止めを増やす
→秋から冬の成績状況にもよりますが、滑り止めが駒澤大学のみでは非常に心もとないです。
よって、付け足すならば創価大学(法学部:偏差値50)や東京経済大学(現代法学部:偏差値50)などがあげられます(この2校は就職に強いイメージがあります)。
また、法学部に絞ってしまうとあまり下のレベルが見つからなくなりますので、場合によっては他学部で合格しやすいところを選ぶのもありでしょう。
以上の理由から、↓のようになるととても現実的と言えます。
◎サンプル1(私大法学部狙い・改訂例)
大学名 学部 偏差値
第1志望:慶應大学 法律 70
第2志望:中央大学 法律 65 全学部入試と一般入試の2回
第3志望:立教大学 法律 62.5 一般入試を2回
第4志望:駒澤大学 法律 57.5 文学部も併願
第5志望:東京経済大学 現代法 50.0 経済学部も併願
◎サンプル2(国立理系・物理タイプ)
大学名 学部 偏差値
第1志望:千葉大学 工 62.5
第2志望:埼玉大学 工 57.5
第3志望:東京理科大学 工 62.5
第4志望:芝浦工業大学 工 57.5
第5志望:千葉工業大学 工 50.0
→これはいい例です。レベルが散っていますし、千葉工業大学は共通テスト利用入試で複数の学科で出願し、さらに一般入試でも出願すれば、合格をつかめる可能性はより高まります。
これにアドバイスを加えるとすれば、成蹊大学の理工学部、共通テスト利用入試の5教科タイプ(2次試験あり)を勧めるくらいでしょうか。
私立大学のみを受験する予定の人はこの方式では受験できないので、ライバルが少ないです。レベルは芝浦工業大学と千葉工業大学の間くらいになります。
◎サンプル3(やりたいことが具体的に決まっている)
大学名 学部 偏差値
第1志望:筑波大学 情報 62.5
第2志望:明治大学 理工 57.5 全学部と一般入試の2回受験
第3志望:東京工科大学 デザイン工 50.0 共通テスト利用入試と一般入試を複数回受験
→受験校数が少ないですが、これならこれで問題ありません。最近では学部・学科の名称にもさまざまなバリエーションがあり、一見すると志望校に一貫性がないようにも見えますが、きちんと中身を調べればこういうラインナップになることは十分ありえます。
大学受験は少なくても4,5校、多ければ10校以上の受験をする人がいます。
ただ、やりたいことがハッキリしていて、それでいてレベルが散っているならばこれくらい絞ってもいいでしょう。その場合、私立大学は同じ学校で複数回の受験を検討するようにしましょう。
◎サンプル4(私立文系でやりたいことが定まってない)
大学名 学部 偏差値
第1志望:國學院大学 文 55.0
第2志望:東洋大学 文 52.5
第3志望:大東文化大学 文 50.0
第4志望:文教大学 文 47.5
第5志望:明星大学 心理 42.5
第6志望:文教学院大学 心理 40.0
→私立文系のタイプです。一見、レベルが散っていて悪くないような気もしますが、これほど細かく刻む必要はないように思います。
もちろん、すべて行きたい学校で、たまたまレベルが均等に分かれていったのであれば問題ありません。ただ、学校の特徴ではなく学部と偏差値だけを見てこのようなラインナップにする受験生は少なくありません。
受験校の偏差値は上から下まで15くらいの開きがあってもそんなに不思議はありません。むしろ、偏差値50~55だけに集中する、とかは好ましくありません。
似たようなレベルの学校は多くて3校くらいに留め、なるべくレベルを散らしましょう。また、一番レベルの低い学校だけを残して確実な安全校とするならば、メインの受験校との偏差値差が10くらいの学校を1つだけ抑えにするという作戦でもいいでしょう。
よって、↓のようになってもいいと思います。
◎サンプル4(私立文系・改訂例)
大学名 学部 偏差値
第1志望:國學院大学 文 55.0 3回受験
第2志望:東洋大学 文 52.5 3回受験
第3志望:大東文化大学 文 50.0 2回受験
第4志望:文教学院大学 心理 40.0 共通テスト利用入試と一般入試の併用
このように、「学校名を増やす」のではなく「受験回数を増やす」ことが個人的におススメの受験作戦になります。理由は簡単で、「対策する学校の数が減らせる」ことが大きいです。
また、同じ学校を複数回受けることで、似たような問題が出題されたり、特定の試験日だけうまくいったりして「3回受験してそのうち1回だけ合格した」という成功例は少なくありません。
逆に、各大学を1回ずつ受験するタイプだと全敗だったり、一番下の大学しか受からなかったりする残念な結果に陥りやすくなります。
したがって、「下げるとしてもここまで」という学校を一つ決めて、あとは行きたい学校を2,3校、レベルを散らしつつ複数回の受験ができれば効率がいいのではないかと思います。
気持ちとしては「安全な学校を1つ用意して、そこに行かなくていいように志望順位が下から2番目以上の学校の合格を目指す」というような感じでしょうか。
もちろん、いつだって第一志望に受かるつもりでいてほしいですが、実際に第一志望に進学できる人は2,3割程度だと思いますので、これくらい備えの話をしておかないといけないのが現実的な話だと思います。
今回は具体例でみていきましたので、自分の場合はどうだろうと、少し具体的に考えてみてはいかがでしょうか。
次回はそれをふまえて、受験方式や日程を考えることでより細かく検討するステップに入ります。
(つづく)