(高校2年生向け)推薦系選抜について
2022年も共通テストが実施され、今年度の大学入試がついに始まりました。ここからは受験生の本気の戦いになりますので、あとは健闘を祈るのみです。
そんな中ではありますが、ここでは2023年の入試に挑む現高校2年生向けの話をしばらく続けていこうと思います。今年の入試が始まったということは、来年の入試まで1年をきったということになりますので、受験に向けた準備を始めていきましょう。
今回は「受験方式を決める際に知っておくべきこと」として、推薦系選抜の話です。興味がある人は多いでしょうから、少しでも参考になればいいと思います(そもそもの仕組みは学校や予備校、その他あちこちで情報が流れているでしょうから、その部分はここでは割愛します)。
「大学入試の仕組みは複雑でよくわからない」という声をたくさん聞きます。それは受験指導をしている身でも思うことで、何年、何人もの受験生の対応をしてもまったく慣れられるものではありません。
とにかく入試制度や方式の種類が多く、どのように選択すればいいのかわからないという人が多いですが、難しいのは推薦系選抜になると思います(ひとまずここでは、一般選抜ではない選抜方式を推薦系選抜と呼ぶことにします)。
大学入試において、AO入試が始まって以降、推薦系選抜が大きな割合を占めるようになりました。現在では国公立大学では約20%、私立大学では約50%がこの推薦系選抜で入学していると言われます。
以下、推薦系選抜の特徴やメリット・デメリットなど、知っておくべきポイントをまとめますので、参考にしてください。
<推薦系選抜の特徴>
① 指定校推薦
9月から10月にかけて、まずは学内選考へ応募し、それに通過すれば受験資格を得られるものです。10月から11月にかけて出願をし、12月には結果が出ます。これはすべて専願で、合格したら必ず進学するものになります。
これは国立大では実施しておらず、私立大学も高校によって大学や学部、定員が決まっていて、用意された枠を在校生の希望者で争うことになります。
学内選考では評定平均の基準が設定されることがほとんどで、その基準は通っている高校によって大きく異なりますが、3.3以上、3.8以上、4.2以上など、レベルによって様々です。また、学部によっては特定の科目の評定、あるいは外部検定試験の結果を採用するものもあります。
学内選考を通過したあとは大学への出願となり、志望理由書を書くなど簡単な試験はありますが、合格はほぼ間違いないものとなります。
② 公募推薦
(一部、自己推薦のようなものもありますが)学校長の推薦を得て出願するものです。多くは専願制ですが、私立大では併願が可能なものもあります。
出願にはやはり一定の評定平均が必要になりますが、基準はおおむね3.5以上、国公立の場合は4.0以上となります。
指定校推薦とは違い、受験すれば合格できるということはなく、試験が設けられることになります。試験内容は大半が小論文と面接になりますが、私立大では学力検査を課すこともあります。レベルは大学によってかなり異なっていて、それ専用の対策が必要になります。
③ 総合型選抜(旧AO入試)
①と②は学校推薦型選抜といわれるものですが、こちらは自分一人でできるものが多く、あまり「推薦」という感じがしません。
AO入試から名称が変わりましたが、基本的な仕組みは同じで、学力検査以外のさまざまな観点で生徒を評価しようとする入試です。バリエーションが多く、書類選考やプレゼンテーションなど、入試によって内容が大きく異なり、準備の負担が大きいものが多くなっています。
出願条件に評定平均の基準が設定されることが多いですが、その基準は3.2~3.6と、比較的緩やかなことが多く、その気になれば受験することができる場合が多いです。
専願制が多いですが、併願もそれなりに多くあり、複数受験する人もいます。ですが、やはり準備が大変なので、制度上は可能であっても実際に複数受験する人はあまり多くありません。
<推薦系選抜のメリット・デメリット>
① 指定校推薦
☆メリット
・学内選考さえ通過できれば、合格はほぼ間違いない(学校側は油断しように注意してくる)。
・評定がしっかり取れていれば、魅力的な選択肢が選べる可能性がある。
★デメリット
・選択肢が少なく、学力相応の大学よりも低いレベルから選ぶことが多い。
・人数の枠が少なく、ライバルの存在によって状況がかなり大きく左右される。
→1人の枠に対して希望者が何人いるか教えてもらえないことが多い。他の希望者の成績も当然わからないので、かなりそわそわすることになる。逆に、もしも自分以外の希望者がいなければ簡単に通過することもある。運に左右されやすい。
② 公募推薦
☆メリット
・試験が課される場合も多いが、内容は比較的易しめ。
→あくまでも「チャンスが一回増える」という程度にとらえ、一般選抜も視野に入れること。
★デメリット
・倍率は決して低くなく、公募推薦だけで受験を終えられるとは限らない。
・小論文や面接の練習など、負担は大きい。
③ 総合型選抜
☆メリット
・自己アピールや面接だけで合格できるものもある。
・一般選抜よりもライバルが少なく、自分の学力レベルよりも上の大学に合格できる可能性もある。
→対策が大変なので、学力はあってもこの仕組みを利用しない人が多く、試験内容によっては学力試験では難しいと思われる学校でも十分チャンスがある(こういう人を獲得するのが主な狙いになるはずなので、当然と言えば当然。要するに、学力ではなく生きる力を問うイメージ)
★デメリット
・評価方法に不透明なものが多く(プレゼンや面接など)、難易度の見込みが立てにくく、また合格の見込みも立てにくい。
・準備に相当な時間がかかり、一般選抜に支障をきたす可能性も無視できない。
→大学によって状況が大きく異なるので、具体的な受験校を早い段階で検討し、試験内容や倍率などを調べておく必要がある。また、総合型選抜のみを考えるのは非常に危険なので、必ず一般選抜の十件も前提に考えること。これを目指す場合は相当な覚悟が必要になるが、ハイリスクハイリターンであることは間違いない。
<まとめ>
推薦系選抜は、活用できるのであればチャンスであることは間違いないでしょう。最初からあきらめるのではなく、かといってそれだけを頼りにするのでなく、それぞれの制度の特徴をしっかり理解し、十分な準備をもって挑むといいでしょう。
個人的には「3年生になるまでほとんど勉強してなかった」という人で、かつ評定もあまりよくない人には総合型選抜(旧AO入試)の受験を視野に入れてほしいと思います。学力検査では難しくても、こちらでは勝機があるものもあります。
特に、人前で話すことに慣れていたり、文章を書くのが得意(早い)だったりする人は可能性が増すのではないかと思います。
知っている人は知っている、というか得する制度がこの推薦系選抜だと思いますので、最初から一般選抜のみを見据えるのではなく、調べるだけ調べてみることをおすすめします。