勿忘荘(わすれなそう)

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(中学生向け)過去問の取り組み方・冬

 夏にも一度お話していることですが、時期が変わったので、改めて過去問の取り組みについてです。

 時期にあわせて内容を調整していますので、以前の内容と重複している部分もありますが、確認の意も込めて書き進めていきます。

 

 中学生でも高校生でも、冬休みが始まる頃には全範囲を一通り学習し終えて、入試対策に力を入れるようにしていきたいです。

 高校受験の場合、地域や第一志望の区分(公立/私立)などで試験日程は大きく異なりますし、大学受験の場合は1月中旬の共通テストが本番のスタートという人が多いでしょうから、冬休み期間中に少なくとも1度は自分が受ける試験の過去問を解いておくべきでしょう

 

 それでは、ここからは前編として中学生向けに過去問の取り組み方についてまとめますので、受験生の方も来年以降に受験生になる方も、ぜひお読みください。

 

 ① 入試1ヶ月前から本格的に1周目を解き始める 

→1ヶ月前というのはあくまでも目安です。

 ここで言いたいのは、とにかく「過去問は直前までとっておく」という作戦は避けましょう、ということです。

 特に最新のものに関しては「もったいないから、本番前の最終チェックとして使いたい」という人がいます。気持ちがわからないこともないですが、最終チェックであれば別に2周目でも3周目でもいいと思いますので、とりあえず手に入る分(あまり昔までさかのぼる必要はないでしょう)は必ず前もってやっておいてほしいのです。

 むしろ、直前の最終チェックであれば、過去問と似たような初見の問題でチャレンジしてほしいです。理由は簡単で、昨年出た内容は次の入試では出ないからです(詳しくは後述)。

 傾向や出題分野は同じでも、まったく同じ問題が出ることはないので、似たような形式、問題数、配点の模擬試験が理想です。

 

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 ただ、直前にそういう取り組みをして、うまくいかなかったときに自信を無くしてしまう可能性がある場合は、②に示す通り、一度解いたことのある問題を繰り返し行うことで自信を高めたほうがいいでしょう。

 このあたりは、各自のメンタルにあわせて対応を変えていけばいいのだと思います。 

 

 ② 入試直前の1~2週間前は類題と弱点の補強に充てる 

→過去問は直前に、を避けてほしい一番の理由はこれです。

 過去問はあくまでも過去問ですから、言ってしまえば次の入試では出ません。ですから、過去問と似たような問題で練習を積んでほしいのです。

 過去問をこなしていくうちに、出題の傾向や自分が苦手とする分野がわかってきているはずですから、1周目で間違えたところを2周、3周と取り組みつつ、自分が苦手としている部分を補っていきましょう。

 気持ちとしては「こういう問題が出たらまずい」と思うところを重点的に取り組んでほしいのです。また、「こういう問題が出たら捨てる」という作戦を立てるのもいいでしょう

 可能であれば自分の志望校にあわせて入試で取るべき点数を把握して、「確実に取らなきゃいけない問題」と「対策して取りに行く問題」と「捨ててもいい問題」の仕分けをしましょう

 これは一人ではなかなか難しいかもしれないので、学校や塾の先生に聞くとよいでしょう。

 

 過去問を解く際にはこのあたりの意識をしっかり持って、時間内で目標の点数を取り切ることを常に考えながら取り組むようにしましょう。

 

 ③ 私立と公立は並行させない 

→私立を併願し、公立が第一志望という人はたくさんいると思います。その場合、私立入試が先で公立入試があと、という日程になると思います。

 この場合、取り組む順番に悩む人もいるでしょう。個人的には、公立入試の過去問については、私立入試が終わってから取り組む形でいいと思います。

 

 理由は簡単で、私立入試は公立入試の範囲を超える可能性があるからです。

 一般的に私立入試のほうが問題の難易度は高いと言われます(もちろん学校によって差異はあります)。そのため、「難しい私立の勉強をすれば公立のためにもなる」と考える人もいますが、実際はあまり効果はないと思われます

 というのも、私立入試と公立入試はあまり似ていないからです。

 特にマークシート型の私立入試と記述問題が多い公立入試では、問題は似たようなものでも解答の仕方が違えばそれはもはや別物です。

 

 要するに、私立入試は私立入試の、公立入試には公立入試の、それぞれ対応策があるので、同時並行するよりも一つに絞って集中して取り組んだほうが効率がいいと思うのです。

 

 以上が高校受験向けの過去問の取り組みについてでした。

 後編は大学受験向けになりますので、よろしければそちらもお読みください。

 

埼玉の数学について(2021年入試)

 埼玉県の2021年入試における数学について、個人的な見解をまとめています。今回は学校選択問題(難しいほう)についてです。

 「埼玉の数学は難しい」と言われていましたが、それはこちらの学校選択問題に言えることになりました。学力検査問題と同じ問題もいくつかありますが、難易度の差は歴然となっています。

 

 ・出題内容と配点、難易度 ☆印は学力検査問題と同じものを表す

大問1(独立小問集合)

(1)式の計算(中2) A(4点)

(2)式の値(中3) B(4点)

(3)2次方程式の計算(中3) B(4点)

(4)2乗に比例する関数(中3) A(4点) ☆

(5)有効数字(中1) B(4点) ☆

(6)資料の整理(中1) A(4点) ☆

(7)立方体の展開図(中1) A(4点)

(8)連立方程式の文章題(中2) A(5点)

(9)確率(中2) A(5点)

(10)平面図形(中1) B(6点) ※部分点あり

 

大問2(独立小問)

(1)作図(中1) A(5点)

(2)座標幾何(中3) A(6点)

 

大問3(文章題)

(1)説明(中2) B(6点) ※部分点あり、★

(2)整数問題(中3) B(6点) ※部分点がある可能性あり

 

大問4(平面幾何)

(1)長さを求める(中3) B(5点) ☆

(2)相似の証明(中3) D(6点) ※部分点あり

(3)線分比と面積比(中3) C(5点) ☆ 

 

大問5(関数と図形)

(1)2乗に比例する関数の利用(中3) A(5点)

(2)動点と面積比(中2) C(6点)

(3)動点と面積(中3) C(6点)

 

 

  ・学年ごとの配点と、難易度ごとの配点

中1…5問=23点  中2…5問=26点  中3…10問=51点

難しくしようと思うとどうしても中3内容に偏る。学力検査問題と逆の傾向なので、どちらを受験するのかによって対策の仕方がかなり変わってくることは間違いない。

 志望校をいくつかの学校で迷っていて、学力検査問題と学校選択問題のどちらも受験する可能性があるのなら、ここの判断はなるべく早めにしたほうがいい。

 学校選択問題を受験する予定から学力検査問題のほうに変更する場合は、圧倒的に取り組みやすくなるが、それまでにしていた(するべき)勉強はあまり役に立たないことになるし、他教科の勉強にも影響を与えかねないので、ここの選択はそれなりの覚悟を持って決めるべきだろう。

 

 

A(必ず正解したい問題)…9問=42点

B(できれば正解したい問題)…7問=35点 ☆ここでミスしないようにしたい

C(少し難しい問題)…3問=17点 ★ここが合否を分ける問題

D(捨ててもいい問題)…1問=6点 ※部分点狙い

→例年はAがもっと少なくB、Cが多い印象だが、今回はミスしなさそうな問題が多かったように思うので、数学が苦手でも極端に低い点数は取らないのではないかと思われる。

 

 

  ・所見

 学校選択問題は範囲が縮小されたことにより易しくなったように感じる。

 大問1の問題数が増えたが、模範解答通りでなくても力づくで解ける問題もいくつか見られたため、例年よりも点数が取りやすくなったと思われる。

 記号選択問題が1問、説明や証明を含む記述問題が4問と、回答形式もほぼ例年通り。

 

 大問1の(5)の有効数字は、本来ならば難易度Aとしたいところだが、埼玉県では初めての出題であり、対策をしていないとすっかり忘れている可能性もあるため、難易度Bとした。

 出題範囲の縮小が大きく影響したか、大問1で方程式の文章題が出題されたり、平面幾何で学力検査問題と同じ題材が扱われたり、立体の問題が難しくできなかったりと、例年にない傾向が見られた。

 動点の問題は何年かに一度出題されるので珍しいことはないが、ここ最近出ていなかったので、対策が不十分だった受験生もいるかもしれない。

 問題量と難易度に対して50分という試験時間は少し厳しいが、例年よりも時間は確保できるように思える。ただ、大問3以降はどの問題に時間をかけて、どの問題を飛ばすかの判断をすることや、大問1で下手に時間をかけすぎないようにすることは必要だったと思われる。

 

  ・次年度に向けて

 どんな受験においても、難しい問題が中心で構成される入試問題に挑むにあたって大切なことは、時間配分と問題の取捨選択を上手にすることだろう。

 前から順に解く必要もないし、どこで点数を取ろうが合否は合計点で決まるので、たとえ空欄ばかりでも埋めたところがすべてあっていればまったく問題はないと言える。

 そして、自分の受験校に合格するために、どれくらいの得点が必要なのかも事前に把握しておくべきだろう。正確な予測はできないにしても、五教科のバランスを鑑みて、時間内に自分が取るべき問題をきっちり見極めて作戦を立ててもらいたい。

 

 学習塾で指導をしていても、どうしても生徒は難しい問題の攻略に目がいきがちだが、手を広げ過ぎるのは考え物である。

 各都道府県によって五教科の難易度バランスは大きく異なってくるだろうが、少なくとも埼玉県の学校選択問題を採用する学校を受ける場合、数学は60点前後を守り切ればどんな学校でも勝算はある。

 埼玉は理科社会で限りなく高得点を狙う必要があり、国語と英語も易しくはないので、少なくとも数学ばかり勉強するわけにはいかない。

 まして、勉強時間に対して点数の上昇が期待しやすいのは理科社会と英語のはずなので、このあたりも頭に入れて次の受験生には学習計画を立ててもらいたい。

埼玉の数学について(2021年入試)

 2021年の埼玉県の公立高校入試について、個人的な見解をまとめておきます。今回は学力検査問題(易しいほう)の数学における出題内容と難易度についてです。

 私自身が埼玉県の学習塾で勤務していたこともあり、埼玉県に関する話に偏ってしまいますが、全国の公立高校入試に置き換えて話せることもあると思うので、次年度の受験生に向けて少しでもアドバイスができればいいなと思い、書き進めることにします。

 

【学力検査問題】

 ・出題内容と配点、難易度

第1問(独立小問集合)

(1)文字式の加減(中1) A(4点)

(2)正負の数の計算(中1) A(4点)

(3)文字式の乗除(中2) A(4点)

(4)1次方程式の計算(中1) A(4点)

(5)平方根の計算(中3) A(4点)

(6)因数分解(中3) A(4点)

(7)連立方程式の計算(中2) A(4点)

(8)2次方程式の計算(中3) A(4点)

(9)角度を求める(中2) A(4点)

(10)2乗に比例する関数(中3) B(4点)

(11)球の表面積と体積(中1) B(4点)

(12)立方体の展開図(中1) A(4点)

(13)有効数字(中1) B(4点)

(14)確率(中2) A(4点)

(15)資料の整理(中1) B(4点)

(16)平面図形(中1) C(5点) ※説明含む、部分点あり

 

第2問(独立小問)

(1)作図(中1) A(5点)

(2)座標幾何(中3) B(5点)

 

第3問(文章題)

(1)規則性(中1) A(4点)

(2)文字式の利用(中2) C(6点) ※説明含む、部分点あり

 

第4問(平面幾何)

(1)相似の証明(中3) A(5点) ※部分点あり

(2)長さを求める(中3) C(5点)

(3)線分比と面積比(中3) D(5点)

 

 ・学年ごとの配点と、難易度ごとの配点

中1…10問=42点  中2…5問=22点  中3…8問=36点

→基本的な問題を集めようと思うとどうしても中1・中2に偏りがちになる。このあたりも次の受験生はしっかり把握しておくべき。

 

A(必ず正解したい問題)…13問=58点

B(できれば正解したい問題)…5問=21点

C(少し難しい問題)…3問=16点

D(難しい問題)…1問=5点

→そもそも大問1で65点分あるので、いかにミスなく乗り切れるかがポイント。つまり、難しい問題をできるようにすることよりも、易しい問題で落とさないようにすることのほうがよっぽど重要

 これはどんな受験においても言えることだろう。1年生でも2年生でも解ける問題は意外と少なくないので、自分が受験する予定の入試問題を見て、学年ごとの配点や難易度を確認し、今の自分でどれだけできるのか試してみるのもいいだろう。

 

 

 ・所見

 学力検査問題は例年通りに易しい問題が多く、高得点勝負になることが予想される。記号選択問題が2問、説明や証明を含む記述問題が3問と、回答形式も例年通り。

 大問1の(13)の有効数字は、本来ならば難易度Aとしたいところだが、埼玉県では初めての出題であり、対策をしていないとすっかり忘れている可能性もあるため、難易度Bとした。

 この他にも、大問1の(8)2次方程式の解の公式、(11)の球の体積や表面積、大問4(2)で用いる角の二等分線の性質など、公式を覚えていないと難しい問題もあった。2次方程式の解の公式や、角の二等分線の性質は埼玉県ではよく出題されるので、事前にしっかり対策しておくとよい。

 問題量と難易度に対して50分という試験時間は十分あると思うので、計算ミスをすることなく、A・B問題で確実に得点を稼ぎ、CやDの問題で少しでも多くの点数を取れれば80点以上も十分狙えると思われる。

 

 ・次年度に向けて

 埼玉県の2021年入試では、相似な図形の後半から円周角の定理、三平方の定理、標本調査が出題範囲外となったため、例年とは出題内容が変わっている。

 他の地域でも多かれ少なかれ、新型コロナウィルスの影響を受けていると思われるが、次年度は2021年入試とそれ以前の入試の両方の傾向をふまえて対策する必要もあるだろうから、見方によっては次年度のほうが厄介と言えそう。

 

 いずれにせよ、受験を成功させるための一番のポイントは、取れるところできっちり点数を取ることである。

 受験勉強となると、どうしても難しい問題をできるようにするために苦労するイメージが強いし、その努力はもちろん必要なのだが、分析した難易度と配点にもあるように、難しいからと言って配点が高いわけでも、易しいからと言って配点が低いわけでもないので、このあたりを重々理解して効率よく高得点を目指すようにしていきたいものである。

 

 

 次は学校選択問題についてです。埼玉県の人はもちろん参考にしてもらいたいですが、他の地域の人にも当てはまる部分はあると思うので、よろしければ次の記事もお読みください。