埼玉の数学について(2022年入試)
2022年に行われた埼玉県の公立高校入試の数学について、個人的な見解をまとめています。今回は学校選択問題(難しいほう)についてです。
「埼玉の数学は難しい」と言われていましたが、それはこちらの学校選択問題に言えることになりました。学力検査問題と同じ問題もいくつかありますが、難易度の差は歴然となっています。
・出題内容と配点、難易度 ☆印は学力検査問題と同じものになります。
大問1(独立小問集合)
(1)文字式の乗除(中2) A(4点)
(2)平方根の応用(中3) B(4点)
(3)2次方程式の計算(中3) B(4点)
(4)平方根の応用(中3) A(4点) ☆
(5)平行線と線分比(中3) A(4点) ☆
(6)データの分析(中2) B(4点) ☆
(7)標本調査(中3) A(4点) ☆
(8)連立方程式の文章題(中2) B(5点)
(9)関数のグラフ(中3) A(5点)
(10)相似比と体積比(中3) B(5点) ※部分点あり ☆
大問2(独立小問)
(1)作図(中1) C(6点)
(2)座標幾何(中3) D(6点)
大問3(文章題)
(1)確率(中2) B(5点)
(2)直線の式・場合の数(中2) B(6点) ※部分点がある可能性あり ☆
(3)確率(中2) D(6点) ※部分点あり ☆
大問4(平面幾何)
(1)合同の証明(中2) A(6点) ※部分点あり ☆
(2)円と三平方の定理(中3) C(5点) ☆
大問5(空間図形)
(1)立体の体積(中1) A(4点)
(2)立体の体積(中1) C(7点) ※部分点あり
(3)三平方の定理の応用(中3) E(6点)
・学年ごとの配点
中1…3問=17点 中2…7問=36点 中3…10問=47点
→難しくしようと思うとどうしても中3内容に偏りがちで、特に今年は中1の知識のみで解ける問題が極端に少なかったです。これは学力検査問題も同じ傾向でしたが、今年は例年よりも偏りがあったように思います。
学年をまたいで幅広い知識を必要とする問題が多いので、中1・中2生がチャレンジしても手も足も出ない問題ばかりなので、やはり3年生の学習が重要になります(作図は中1で扱うものですが、今回は特定の長さの作図なので、中3の知識がないと解くことができませんし、大問4の(1)も中3の知識があったほうがいい問題です)。
学力検査問題と同様に難しい問題は極端に難しいので、時間内に全問正解を目指すことはかなり難しいと思いますし、それを目指す必要もないでしょう。
・難易度ごとの配点
A(必ず正解したい問題)…7問=31点
B(できれば正解したい問題)…6問=33点 ★ここでミスしないようにしたい
C(少し難しい問題)…3問=18点 ★ここが合否を分ける問題
D(かなり難しい問題)…2問=12点
E(捨てていい問題)…1問=6点
※難易度は学校選択問題を受ける人を基準に設定しています。
→数学が苦手な人はAとBをとにかくミスなく乗り切ることが鍵を握りますし、数学で高得点を目指すならばCとDで1問でも多く正解を目指す必要があります。
AとBがすべてできれば平均点は軽く超えるでしょうし、DとEができなくてもそれ以外ができればどの学校を受験したとしても問題ない得点になりますので、問題の取捨選択が非常に重要になるのは常に言えることになります。
・所見
難易度や配点、問題数など、パッと見の印象は昨年度とあまり変化はないように見えるが、点数が取りやすい問題と捨てたほうがいい問題の区別はつきやすかったように思うので、落ち着いて試験問題全体と向き合えればある程度の点数は確保しやすかったように思われます。
記号で答える問題が2問、説明や証明を含む記述問題が4問と、回答形式は昨年度とほぼ同じで、次年度も大きな変化はないでしょう。
大問1の(6)のデータの分析は初登場で、昨年度の有効数字と同様に、新しく教科書に入った内容も最低一つは織り込まれる模様です。このあたりは過去問ではなかなか練習できないため、学校の教材を有効活用したほうがよさそうです。
大問1の最後で生活に結び付けた文章題のようなものが出題されるのも埼玉県の特徴で、ここは毎年難易度が不規則で、今年はやや解きにくかった印象でした。
大問5はなかなか難しく、(1)からつまずいてしまう人もいるかもしれませんし、(3)ができた人はほとんどいないんじゃないかと思います。(2)までは中1の知識だけでも解けなくはないですが、このレベルは学校の教科書じゃ太刀打ちできないと思いますし、対策したところでなかなかできるようにもならない気がします。
問題量と難易度に対して50分はかなり短いですが、それはあくまでも満点を狙うならばの話です。
60点から80点を目指すことを念頭に問題の取捨選択をしっかりすれば、50分あれば十分だと思うので、計算ミスをすることなく、A・B問題で確実に得点を稼ぎ、CやDの問題で少しでも多くの点数を取るように心がけるといいでしょう。
・次年度に向けて
埼玉県の2022年入試では、中3内容の演習量が鍵を握りそうでしたが、これは例年の印象とは少し異なるので、対策としては中1と中2の内容もしっかり練習しておくべきでしょう。特に、難易度が低い問題は中1・中2の範囲におさまりがちなので、数学が苦手な人ほど基礎基本を大事にしてほしいです。
裏を返せば、難しい問題は最初から捨てる覚悟で60点くらいを狙うのであれば、数学の入試対策の負担はかなり小さくできるでしょうから、そのぶん理科社会に力を入れて5教科の合計点で勝負するという作戦もおおいに有効と言えそうですし、個人的にはこういう作戦を推奨したいです。
いずれにせよ、受験を成功させるための一番のポイントは、取れるところできっちり点数を取ることです。
受験勉強となると、どうしても難しい問題をできるようにするために苦労するイメージが強いですし、その努力はもちろん必要なのですが、分析した難易度と配点にもあるように、難しいからと言って配点が高いわけでも、易しいからと言って配点が低いわけでもないので、このあたりを重々理解して効率よく高得点を目指すようにしてほしいです。
以上が2022年の埼玉県の数学についての個人的な見解でした。具体的な内容はともかく、所見や次年度に向けた心構えについては埼玉県以外の受験生にとっても言えるところはあると思いますので、少しでも参考になれば幸いです。