勿忘荘(わすれなそう)

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埼玉の数学について(2022年入試)

 2022年の2月に行われた埼玉県の公立高校入試について、個人的な見解をまとめておきます。今回は学力検査問題(易しいほう)の数学における出題内容と難易度についてです。

 私自身が埼玉県の学習塾で勤務していたこともあり、埼玉県に関する話に偏ってしまいますが、全国の公立高校入試に置き換えて話せることもあると思うので、次年度の受験生に向けて少しでもアドバイスができればいいなと思い、書き進めることにします。

 

【学力検査問題】

 ・出題内容と配点、難易度

第1問(独立小問集合)

(1)文字式の加減(中1) A(4点)

(2)正負の数の計算(中1) A(4点)

(3)文字式の乗除(中2) A(4点)

(4)1次方程式の計算(中1) A(4点)

(5)平方根の計算(中3) B(4点)

(6)因数分解(中3) A(4点)

(7)連立方程式の計算(中2) A(4点)

(8)2次方程式の計算(中3) B(4点)

(9)円周角(中3) B(4点)

(10)一次関数と反比例(中2) B(4点)

(11)円錐の展開図(中1) C(4点)

(12)平方根の応用(中3) C(4点)

(13)平行線と線分比(中3) C(4点)

(14)データの分析(中2) C(4点)

(15)標本調査(中3) C(4点)

(16)相似比と体積比(中3) D(5点) ※説明含む、部分点あり

 

第2問(独立小問)

(1)作図(中1) B(5点) ※特定の長さを作るため、中3の知識が必要

(2)座標幾何(中3) C(5点)

 

第3問(文章題・確率と座標の融合)

(1)直線の式(中2) A(4点)

(2)場合の数(中2) C(4点)

(3)確率(中2) E(6点) ※説明含む、部分点あり

 

第4問(平面幾何)

(1)合同の証明(中2) C(6点) ※部分点あり

(2)円と三平方の定理(中3) D(5点)

 

 ・学年ごとの配点と、難易度ごとの配点

中1…5問=21点  中2…8問=36点  中3…10問=43点

→問題数や配点は例年通りでした。

 学年をまたいで複数の知識を必要とする問題もありますが、ここでは単元でのみ区分しています。今年は中1の知識だけで解ける問題が非常に少なく、中3内容が多くなっています。これまでそういった印象はありませんでしたが、昨年度がコロナの影響で試験範囲が縮小された反動かもしれません。

 

A(必ず正解したい問題)…7問=28点

B(できれば正解したい問題)…6問=25点

C(少し難しい問題)…7問=31点

D(難しい問題)…2問=10点

E(捨てたほうがいい問題)…1問=6点

※学力検査問題を受験する人を基準にしています。

→大問1の基礎的な問題で65点分あるので、いかにミスなく乗り切れるかがポイントです。つまり、難しい問題をできるようにすることよりも、易しい問題で落とさないようにすることのほうがよっぽど重要ということになります

 これはどんな受験においても言えることで、入試では満点を取る必要はなく、各自の受験校の合格の目安や、他教科でどれくらいの点数が見込めるかをしっかり考えて、取るべき問題を確実に取れるように練習を重ねるべきです。

 

 

 ・所見

 学力検査問題は例年通りに比べて「とても簡単な問題(難易度A)」が少なく、「難しくはないけどうっかりするとミスするかもしれない問題(難易度B)」がやや多い印象です。

 記号選択問題が2問、説明や証明を含む記述問題が3問と、回答形式は昨年度と同じで、これはほぼ例年通りのため、次年度も大きな変化はないと思われます。

 

 大問1の(14)のデータの分析は初登場で、昨年度の有効数字と同様に、新しく教科書に入った内容も最低一つは織り込まれる模様です。このあたりは過去問ではなかなか練習できないため、学校の教材を有効活用したほうがよさそうです。

 大問1の最後で生活に結び付けた文章題のようなものが出題されるのも埼玉県の特徴で、ここは毎年難易度が不規則で、今年はやや解きにくかった印象でした。

 その他、全体的に「解き方を知っていればすぐにできる」という典型的な問題が多く、演習量で差が付きやすそうな問題構成だったように思います。

 

 問題量と難易度に対して50分という試験時間は十分あると思うので、計算ミスをすることなく、A・B問題で確実に得点を稼ぎ、CやDの問題で少しでも多くの点数を取るようにして80点くらい取れたら文句なしです。

 AとBの問題すべてが解けたら53点で、これがおおよその平均点の目安になる気がします。

 

 ・次年度に向けて

 埼玉県の2022年入試では、中3内容の演習量が鍵を握りそうでしたが、これは例年の印象とは少し異なるので、対策としては中1と中2の内容もしっかり練習しておくべきでしょう。特に、難易度が低い問題は中1・中2の範囲におさまりがちなので、数学が苦手な人ほど基礎基本を大事にしてほしいです。

 裏を返せば、難しい問題は最初から捨てる覚悟で60点くらいを狙うのであれば、数学の入試対策の負担はかなり小さくできるでしょうから、そのぶん理科社会に力を入れて5教科の合計点で勝負するという作戦もおおいに有効と言えそうですし、個人的にはこういう作戦を推奨したいです。

 

 いずれにせよ、受験を成功させるための一番のポイントは、取れるところできっちり点数を取ることです。

 受験勉強となると、どうしても難しい問題をできるようにするために苦労するイメージが強いですし、その努力はもちろん必要なのですが、分析した難易度と配点にもあるように、難しいからと言って配点が高いわけでも、易しいからと言って配点が低いわけでもないので、このあたりを重々理解して効率よく高得点を目指すようにしてほしいです。

 

 

 次は学校選択問題についてです。埼玉県の人はもちろん参考にしてもらいたいですが、他の地域の人にも当てはまる部分はあると思うので、よろしければ次の記事もお読みください。